WILBORN GUITARS
米国ネバダ州リノに工房を構えるルシアー、Ben Wilborn(ベン・ウィルボーン)氏が2009年に創設したハンドメイド・ギターブランドWilborn Guitars(ウィルボーン・ギターズ)。
ウィルボーン氏は幼少期から音楽演奏と木工に親しみ、名門バークリー音楽大学で学び、ギタリストとして活動するなど音楽への造詣が深く、その後は建築業界へ転身するなどをし、第二子の誕生を機にギター製作に挑戦したことをきっかけに、40歳にして本格的にルシアーへ転身するという異色の経歴。
演奏家としての経験を背景に、プレイヤーの視点を反映した独創的なデザインや構造を特徴とし、既存の概念にとらわれない発想で生み出されるギターは「品質への絶対的なこだわりと豊かなトーンを追求する情熱」に裏打ちされています。その仕上がりは細部まで精巧で、使用する木材・ハードウェア・塗料のすべてに最高グレードのみを選び抜き、製作工程の最初から最後まで一貫してウィルボーン氏自身の手で行われています。
代表的なシリーズとして知られるのが、車輪のスポーク状に配置したファンブレースとオフセットサウンドホールを組み合わせたComma Series(コンマ・シリーズ)。ウィルボーン氏の“シグネチャー”とも呼ぶべきこのシリーズは、各機構が有機的に関連し合い、統一された音響的・人間工学的コンセプトを形成しており、他に類を見ない存在感を放っています。
一方で、伝統的なOMやドレッドノートを現代的に再解釈したPeriod Series(ピリオド・シリーズ)。小型のBantamから中型のEllieBelle、大型のPatrosまで多彩なサイズを展開。クラシカルな外観とモダンな響きを融合させています。
こうした徹底したクラフトマンシップにより生み出される楽器は海外でも高く評価され、常にオーダーが途切れない人気ルシアーとして認知されています。
ルシアー
ネバダ州リノ出身。
幼少期から音楽演奏と木工に親しみ、木工職人であった父親の作業場で培った工作技術と音楽的感性を兼ね備えて育ちました。バークリー音楽大学で作曲・演奏を学び、1992年に卒業。自身のバンドを率いて約10年間音楽活動を行ったのち、一時は建設業のコントラクターとして事業を営むなど、異色の経歴を歩んできました。
第二子となる娘エリーの誕生を機に「赤ん坊が寝ている間にできる静かな趣味」としてギター製作に挑戦したことが転機となり、40歳にして安定していた本業を畳み、本格的にルシアーへ転身する道を選びます。その後は、クラシックギタールシアーとして名高く、アンドリュー・ヨークも使用するギターを製作したデビッド・デイリー氏から基礎を学ぶなど研鑽を積み、2009年にWilborn Guitarsを設立。以降は驚異的な情熱と勤勉さで製作に打ち込み、現在に至るまで一日たりともオーダーが途切れたことがないと語るほど、順調に活動を続けています。
製作家としての信条は「プレイヤーによる、プレイヤーのためのギター」。生涯にわたり演奏家である経験を活かし、演奏時のフィーリングや操作性を最優先に考慮して設計・製作を行うのが大きな特徴です。
彼のギターは非常に軽量に作られており、レスポンスと豊かな音響を重視する一方で、耐久性を高める近代的な構造技術も積極的に取り入れ、一生物の楽器に仕上げられています。装飾においては「木材の美しい木目こそ最高の装飾」と考え、不必要に華美なインレイや彫刻は控え、シンプルで洗練された意匠美を追求。さらに、膨大なストックから選び抜かれた最高品質の木材を用い、それぞれの特性に応じて厚みを微調整したりブレーシングを削り出したりすることで、その木が本来持つ潜在的な響きを最大限に引き出すことに情熱を注いでいます。
ウィルボーン氏は「この仕事こそが自分の天職だ。手作業で美しい楽器を生み、それを心から喜んでくれるプレイヤーがいる。そして生活も成り立ち、常に音楽と共に歩んでいる。こんな理想的な状況に、他に何を望むだろうかと語り、妥協なきクラフトマンシップと音楽への愛情をもって日々製作に取り組んでいます。
モデル
The Comma Series(コンマ・シリーズ)の中で最もボディの小さいモデル アイベックス。
スモールサイズとは思えないラウドな鳴りを実現する本モデルには、ウィルボーン氏ならではの創造的かつより豊かなサウンドを得るための効果的な設計に溢れています。
象徴的なサウンドホール形状は気を衒ったものではなく、弦を弾いた際に振動するトップ面の範囲をより広げる狙いがあり、こういった独自構造もアイベックスの豊かな鳴りの一翼を担っています。
ボディ最大幅14インチのパーラーギター アラム。
こちらもパーラーギター以上の音量、各弦・ポジションでのバランスの良さを特長とし、ウィルボーン氏の意匠の詰まったモデルです。
前述のオフセットサウンドホールによる振動の向上の他に見逃せない独自構造が、ブリッジを中心に放射状にブレイスを配置した”ラジアル・ブレイシング”です。これにより従来では高音弦の振動が抑制されていた問題を解決し、より豊かなサウンドを得ることを可能にしています。(なお、ラジアルブレイシングはコンマシリーズの全モデルに採用されています。)
一般的なOMモデルほどのボディサイズの ノーチラス。
フィンガースタイルやストローク、タッピングなど様々な奏法に対応するバーサタイルなモデルです。
The Comma Series(コンマ・シリーズ)は全モデルでマルチスケールを採用しており、ノーチラスでは 1弦は632mmスケール、6弦は645mmとなっており、柔らかな高音弦とハリのある低音を聴かせる点も大きな魅力の一つです。
The Comma Series(コンマ・シリーズ)で最もボディの大きなモデルである サイドワインダー。
スケールも同シリーズの中で最も長く、6弦は660mmスケール、1弦は645mmスケールとなっており、これにより通常のスケールでは味わえないパワフルでハリのある低音を聴かせます。さらに、スケールの長さはドロップチューニングの際にもテンション感が弱くなりすぎず迫力を損なわないなどの利点があります。
The Period Series(ピリオド・シリーズ)のパーラーギターであるバンタム。一般的なシングルオーサイズより小ぶりですが、随所にウィルボーン氏による意匠が凝らされておりパーラーサイズ以上の鳴りを実現しています。
注目すべきはそのボディシェイプ。ボディの凹みが通常のギターより上部にした独自設計”ウェスト・フォワード”により、抱えやすさや演奏性の向上が期待できます。
なお、本モデルは12フレットジョイントと14フレットジョイントのいずれかから選択してオーダーすることが可能です。
The Period Series(ピリオド・シリーズ)より、1935年のギブソン L-00からインスピレーションを受けて製作された、ボディ最大幅 14インチのパーラーギター ライオン。
L-00を出発点とした本モデルですが、ウィルボーン氏による幾度ものモディファイドの結果、L-00とは異なった個性を持った作品となりました。
こちらも”ウェスト・フォワード”構造となっており、また、Xブレイシングの採用、サイドサウンドポート構造といった独自のアレンジが加えられており、バンタムと同様にパーラーサイズ以上の鳴りと低音の迫力と、高音のリッチさが特長です。
本モデルも12フレットジョイントと14フレットジョイントのいずれかから選択してオーダーすることが可能です。
ウィルボーン氏の製作するギターの中で最もバーサタイルなギターであるエリーベル。
ボディ最大幅は15インチであり、スケールは645mmと、一般的なOMサイズと近しいモデルとなっており馴染みやすさやバランスの良さが特長ですが、独自の”ウェスト・フォワード”構造により従来よりもさらに抱えやすい設計となっています。
サウンド面においても優れており、非常に大きな音量であり、ドロップチューニングでの低音はチェロのような響きを聴かせます。
ギブソン J-200とほぼ同等のサイズであり、ウィルボーンギターの中でも特に豊かで迫力のあるサウンドを持ったパトロス。
通常のアコースティックギターとしてもふくよかな鳴りを響かせますが、ボディ構造の余裕から、よりスケールを長くし音域を低くしたバリトン仕様や12弦仕様でのオーダーも推奨されるモデルです。
大ぶりなボディとウィルボーン氏のサウンドメイクからなる、圧倒的な低音と包容力のあるサウンドを聴かせます。フラットピックでのストロークにおいて真価を発揮するモデルであり、弾き語りの伴奏においてもオーケストラ伴奏のような役割を果たします。
グロリアはウィルボーン氏が過去に膨大な量のギターに触れてきた経験を活かし、小ぶりなギターと大きなギターのどちらの利点を兼ね備える一本を目指した意欲作であり、The Period Series(ピリオド・シリーズ)唯一のスロテッドヘッド仕様など異彩を放つモデルです。
OMほどのボディサイズですが、ディープボディとすることで大きな容積を持っており、ブレイシングやトップ板の厚みもボディサイズを考慮しより薄く設計するなどし、ドレッドノート級のサウンドを聴かせます。さらに、スモールギターに見られる甘さやレスポンスの良さと、ラージサイズのギターに見られる低音の迫力とが、どちらも感じられ、特にフィンガースタイルギタリストから高い評価を得ています。
ウィルボーン氏による独自のアレンジが加えられたドレッドノートモデル ウォーホース。
トップ面とバック面にわずかなアーチのある構造とし、ブレイシング形状もアレンジを加えるなど、大量生産を前提とした簡易的な構造を見直し、手工ギターならではの手間やこだわりの詰まっています。
サウンドは圧倒的なパワフルさとバランスの良さを特長とし、フラットピックでの演奏を想定して設計されていますが、フィンガースタイルにおいても威力を発揮します。